早期発見と早期治療を目指す、内視鏡を活用した消化器疾患診療の一端を担う当院について、内視鏡センターの武山真也先生にお話を伺いました。
消化器疾患の早期発見で根治への道を切り拓く
― 西奈良中央病院の内視鏡センターについて教えてください。
内視鏡センターは、内視鏡を用いた診断と治療を行う診療部門です。内科、外科の協力のもと、運営されています。
近年、内視鏡の機器や医療技術の進歩に伴い、消化器疾患の診断と治療において内視鏡は欠かせない存在となりました。当院では日本消化器内視鏡学会の指導施設の認定を受けており、経験豊富なスタッフが患者さんに寄り添い、早期発見と早期治療を目指しています。
厚生労働省の報告によれば、日本人の4人に1人が悪性疾患で亡くなっており、その内訳のトップ5は肺がん、大腸がん、胃がん、膵がん、肝臓がんです。特に消化器がんはその割合が高いのが実情です、しかし胃がんと大腸がんは早期発見によって多くの場合において根治が可能です。特に胃がんは早期の段階では症状が現れないことも多いため「自分は大丈夫」「がんは高齢者がなるもの」などと思わず、症状がない方でも定期的な検査・検診をおすすめします。
当院では上部内視鏡(胃カメラ)や下部内視鏡(大腸カメラ)に加えて、胆道系疾患の検診も行っており、消化管、胆管の内視鏡検査に対応できる医師と設備を整えています。
身体への負担を最小限に抑え、日常生活に早期復帰を
― 低侵襲治療について教えてください。
低侵襲治療とは、身体への負担を最小限に抑えながら病気を治療する方法を言います。内視鏡機器と診断技術の進歩により、胃がんや大腸がんは早期に発見でき、内視鏡治療によって体表面に傷をつけずに切除し、根治を目指すことが可能になりました。その代表的なものが、内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などの治療になります。これらの低侵襲治療は、通常の外科手術に比べて傷口や瘢痕がなく、出血や痛みも軽減されます。また、入院期間も短く、回復が早いため、患者さんの生活に与える影響が少ないと言えます。病気の早期発見や適切な治療法の選択により、患者さんの健康を守ることができます。
女性の癌死亡率が高い大腸がん。心の負担なく検査を受けられるように
― 女性の大腸癌検査の受診率が低いことへの取り組みを教えてください。
当院は大腸カメラによる下部内視鏡検査も行っています。大腸カメラは粘膜を直接観察することで、大腸ポリープや炎症性腸疾患、大腸癌を正確に診断する検査です。近年では、大腸癌の予防と早期発見のために、症状がなくても積極的な大腸カメラ検査が推奨されています。大腸カメラ検査は入院(日帰り入院もしくはポリープ切除がある場合1泊入院)が必要ですが、当院では年間約600件の検査を実施しています。
特に近年、女性の癌死亡率の上位に大腸が位置し、女性の大腸癌検査の受診率が低いことが課題とされております。大切なのは、検査の正確性と同時に、患者さんが心地よく過ごせる環境を整えることですから、心の負担なく、女性の患者さんに安心して検査を受けていただきたいと願っています。希望があれば、経験豊富な女性医師による対応が可能です。患者さんのプライバシーや心理的な配慮に細心の注意を払っています。女性の方々もリラックスして安心・安全な内視鏡検査を受けることができます。
豊富な実績と最新の内視鏡システム
― 導入されている内視鏡システムについて教えてください。
年間約3,500件の上部消化管内視鏡、約600件の下部消化管内視鏡、そして約70件の胆道・膵内視鏡検査を行っています。最新の内視鏡装置を活用し、ハイビジョン画像や拡大機能、NBI(狭帯域光観察)を駆使して診断の精度向上に努めています。特に胃の早期胃癌に対しては、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を行っています。
また現時点で最新の内視鏡システムを導入しており、高画質な映像で微細な粘膜の変化も確認でき、より正確な診断が可能になりました。これにより、正確にがんを発見することができるようになりました。
今後も当院では、患者さんの健康を最優先に考え、検査・治療の一貫性と質の向上に努め、早期発見と早期治療を目指し、患者さん一人ひとりに合わせた丁寧な診療を提供していきます。
内視鏡センター長
武山 真也
(プロフィール)
2004年奈良県立医科大学医学部卒。
2006年奈良県立医科大学消化器内科に入局。
2006年から県立奈良病院消化器内科、救命センターに勤務。
2010年から奈良県立医科大学消化器内科に勤務。
2012年から西奈良中央病院に勤務。2016年内視鏡センター長に就任。
(資格)
- 日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医
- 日本消化器病学会 専門医
- 日本肝臓学会 専門医
- 日本内科学会 総合内科専門医